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苗の「ベッド」作り

2026 5/29
農園日誌
2026年5月29日

3月2日、月曜。早朝5時。 家族がまだ眠りについている静かな時間、私は一人、冷え切った農屋のシャッターを開けます。

目の前にそびえ立つのは、先日、下田の工場から何往復もして運び込んだ「8トンの焼土(しょうど)」の山です。 今日から始まるのは、この無機質な土の山に命を吹き込み、これから目を覚ます種籾(たねもみ)たちを優しく包み込むベッド(床土:とこつち)を作る作業です。

目次

稲にとっての「初めての食事」

皆様は、苗箱(なえばこ)という黒いプラスチックの箱をご存知でしょうか?

田んぼに植える前の約1ヶ月間、稲の赤ちゃんである苗は、この小さな箱の中で育ちます。

その箱の底に敷き詰める土を「床土(とこつち)」と呼びます。

先日運んできた山から採れた「焼土」は、高温で殺菌されているため非常に清潔ですが、それ単体では栄養素が足りず、水持ちも良くありません。 そこで、この焼土をベースに、初期の生育に必要な「肥料」や「殺菌剤」、土をフカフカにして保水性を高める「ピートモス(泥炭を乾燥させたもの)」などを混ぜ合わせていくのです。

このブレンドの比率が狂うと、肥料濃度が濃すぎて根が痛み、薄すぎればひ弱な苗になってしまいます。美味しいお米の味の骨格は、広大な田んぼに出るずっと前、この薄暗い農屋での土作りからすでに始まっているのです。

混合また混合

作業は、巨大なミキサーのような機械(混合機)を使って行います。

清潔な焼土、肥料、殺菌剤そしてフカフカのピートモス。これらを機械に投入し、ムラが出ないよう均一に、そしてひたすらに混ぜ合わせていきます。

スイッチを入れると、「ぎゅーん」と機械が回りだします。5分ほどでしょうか、混合が終わると「ビー!」大きな音でブザーが鳴り響きます。

混ぜ終わった土を隅に排出し、また混ぜる。この作業の繰り返しです。

何千枚という苗箱を満たすための、終わりの見えない単純作業が続きます。

土埃が舞い上がる作業場で一日中作業をしているとマスクをしていても鼻の奥が黒くなってしまいます。

泥臭い労働と、科学的な緻密さ。農業という仕事は、常にこの二つの極端な作業の間に存在しています。そして、そのどちらが欠けても、私が思い描く「感動するほど美味しいお米」には辿り着けないと感じています。

土を寝かせ、種を待つ

ひたすら土を混ぜる作業は一日では終わりません。肉体的負担が大きいので数日に分けて作業します。

徐々に積みあがる土を作業場に差し込む光がほんのり照らしていてなんだかちょっとだけ美しく思いました。

この混合土は次の作業まで今しばらくお休みです。

さてもう少し頑張りますかー!

ではでは、また後日。

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